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ケーナの吹き口のいろいろ

ケーナの故郷、南米アンデスは、南北9,000qにも及ぶ長大な山脈。大陸の西側に延々と連なっています。北部はカリブ海に面したベネズエラから、南極の玄関口チリ・アルゼンチンまでで、数多くの国々が国境を接しています。その中でも、ケーナが普及し愛されているところは、中央アンデス諸国のエクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンのアンデス地方です。そこがケーナのふるさとなのです。今回は、アンデスの葦笛・ケーナの吹き口について、皆さんとともに見てまいりましょう。
  
●吹き口の一般的な削り方 ケーナの吹き口は、管の表側と内側と、両面から削られています。両刃的な構造。ケーナと似た楽器には日本の尺八がありますが、尺八は、表からだけ削られています。片刃的な構造。台湾には洞簫(どうしよう)といって、尺八とは逆に、内側からだけ削られている笛もあります。ケーナと同じ種類の笛は、アジアに数多く存在しているようです。
 ケーナの吹き口の削り込み、いわゆるノッチの形状は、半円形から楕円形。尺八より凹部分はかなり深めです。
 
それでは、具体的にケーナの吹き口を見ていきましょう。
 (実際には地域・制作者によって、かなりの違いがありますので、あくまでも例です。)

 

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ボリビアのケーナによく見られるタイプ  

 

表と裏の削り角度は鈍角的。鳴らすのに最もパワーのいるタイプ。音量、音のスケール感、迫力などを追求するモデル。情熱的。

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ペルーのケーナによく見られるタイプ  

表の削りは、鋭角的で大きい。裏は鈍角的で削りは比較的少ない。音のかすれ〞の味わいが何とも心地よい。ケーナの民族楽器としての良さがよく出ている形態。どこか東洋的な印象のある音色。  

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ペルー型で、表の削りの比較的少ないもの  

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より伝統的なタイプのケーナの吹き口  

アウトクトナと呼ばれる先住民系の要素が強い音楽では、四角タイプの吹き口のケーナの仲間の笛がたくさんある。これは、四角吹き口のケーナの例。より、音色のかすれの味わいを大切にするもの。伝統的な音楽の演奏に適する。

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先住民族の文化要素の強い伝統的な音楽・アウトクトナで用いられるタイプの吹き口  
アウトクトナにはケーナタイプの楽器が数多く存在する。これらがケーナの原型といってよい。チョケーラス、ケナケナ、プシピア、などたくさんの種類があり、長さも指穴のシステムも多様。音階は西洋音階的ではなく、伝統的な独特の音律で調律されている。弦楽器は用いず、太鼓だけで伴奏されることが多いのも特徴。地域ごとに異なる土着の音楽を奏でる。吹き口は四角タイプ。  
ここでは、チョケーラスと呼ばれるものをみてみる。表からの削りが多く、裏からはほとんど削られていない片刃的な構造。かすれの強い音色。  

 

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吹き口側の材質を変えてあるタイプ
吹き口のある頭部のみ、牛骨、セイウチの牙などで接いで作ってあるものが、しばしば木製のケーナに見受けられる。これは飾りではなく、アレルギー反応を防ぐための工夫。  

木製ケーナの材料にはアマゾンの流域原産のものが多い。パロサント、エスピネータ、などを代表とするとても堅くて比重の重い木材がそれである。とても良質な材料で、木目が詰まっていて吸水性が低く、とても堅い材質であり音の響きが出やすい。耐久性も抜群で管楽器の制作にとても向いている。ただし、昆虫の大変多いアマゾンの木材は害虫に対する対抗性がとても強い。虫を寄せ付けないように、木が化学物質を作り出し、それが、しばしばアレルギー反応を引き起こすことがある。そこで、直接肌に触れないように、別の材質で吹き口に加工が施されているのである。  

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◆ 以上、いろいろな吹き口をみてきました。写真はほんの一例です。ケーナの吹き口には、正確に決まった型というものはないと言っていいでしょう。千変万化に形を変えることで様々な音色が生まれ、無限の表現を可能にしています。